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近所の孤児院 [スワヤンブの日々]

 
最近ヤボ用で出入りしている場所が近所(スワヤンブー)にある。
アンブレラ・ファンデーションという孤児院である。
孤児院といっても、全くの孤児だけではなく、
中には、村での生活が貧しいため、子供を育てられない親や、
マオイストから誘拐される危険から逃れてきた親たちの
子供たちもいる。
中には子供をインドに売るのをぎりぎりでやめて
(説得されて)、ここまで連れてきた親もいる。
孤児院というよりは、子供たちのためのシェルターで、
生活、教育に関わるすべての親代わりサポートをしている。
 
5年ほど前に始まったこの院であるが、経過はこうだ。
 
まずはじめに、在カトマンズのアメリカンスクールの先生と親たちが
慈善事業として3箇所の孤児院支援をしていた。
内情を知るにつれ、多くのカトマンズ市内の孤児院が
非常に劣悪な環境にある、ということに気がつく。
 
大抵の孤児院は、小さな建物に多くの子供たちが
ぎゅうぎゅうに押し込められており、
教育も受けられず、ボロボロの服を着て、しらみ、南京虫に体中を刺され、
栄養面、衛生面、教育面、どれをとっても子供にとって
全く最悪の環境であった。
 
きっかけは、ある時、80人の子供たちのいる孤児院に
鶏肉を40キロ寄付した時のことである。
いくらお金を寄付しても、全く子供たちのために使われていない事に
ジレンマを感じていた親たちは、
「肉ならみんなが食べられる」ということで、肉を届けた。
 
後日、子供たちに聞いてみると、少ししか食べていない、
という歯切れの悪い答えであった・・・
事情聴取の結果、一人頭500gはあったはずのチキン、
子供たちが食べたのは、本当にわずかで
園長たちを問い詰めると、
「半分以上売ってしまった」という事実が判明・・・
 
その後の調査で、この院では、子供を竹で打つ、
夜、大人たちの酒を買いに行かされる、
部屋には鍵がかかっていて、夜は部屋に閉じ込められている、
などという事が判ってきた。
 
すぐに、この院は閉院、
この子供たちを引き取って始まったのが、
アンブレラ・ファンデーションである。
 
現在、350人にまで膨れ上がったこのファンデーション、
すべてこの先生と夫、その支援者の私財でまかなわれている。
1年半後には500人になることが確定で、
現在チルドレン・ビレッジをリングロードから20キロの所に建設予定。
インド政府が所有の土地をぼーんと提供してくれたらしい。
そしてインフラ整備のためには、インドのお金持ち
(の奥様たち)が寄付をしてくれるんだって。
 
余談であるが、チベット難民のためにもダラムサラの土地をくれたし、
中国の非難もどこ吹く風で、亡命政府を支援してくれているし、
インドの太っ腹は、日本人には理解を超えたタイミングで出現するのだ。
さすが、6000年の歴史、ガンジーのお家元、
仏教発祥の地、奥が深い。
 
もちろんここまで子供たちが増えると、
運営費ももんのすごくかかるわけで、
現在、各方面(主に外国ね、もちろん。
ネパール政府なんて、なーーーーーんにもしてくれない)
との話し合いが始まっている。
 
ほとんどの子供たちのバックグラウンドは、
他の孤児院から助け出された子供たちである。
最近は、この施設のことを聞いて、
自力で門までたどり着く子たちもいる。
 
つまり、親に捨てられた子や
児童就労から助けられた子や
売春宿から助け出された子供たちが、
その助け出されたはずの施設でひどい目に遭って、
また助け出される、という壮絶な図・・・・
 
4ヶ月ほど前は、とある施設の23人の子供たちが、
ひと部屋に水も食料も無く、2日間以上閉じ込められ、
最後には、ひとりの子供(3歳~4歳)が
脱水症状で死亡。
子供たちが大声で助けを求め、
近所の人々が救出した、という事件があった。
(新聞にも載っていた)
 
その施設を運営していたのは、
どこぞからお金をもらっていた”NGO”で、
運営者とそのスタッフ達は行方不明。
この22人は現在、アンブレラファンデーションに引き取られ、
学校に通っている。
 
「お金を貰えるから”NGO”をする」という悪い人々は、
実際に存在する。
お金を出す方は、センチメンタルな自己満足に浸るだけでなく、
出す側としての責任もきちんと遂行すべきである。
せめて自分が支援している施設の運営が
きちんとされているかどうか位のチェックはしてほしい。
「信用している運営者」でも
大金を手にすると、人格が変わってしまうのが世の常である。
 
さて、先週末は親や親戚のいる子供たち、約3分の一が村に
ダサインのために帰っていった。
3分の2の200人ほどの子供たちは、
帰る場所も無く、施設でダサインを過ごす。
もちろん世話をしている大人たちが一緒だけど、
でも、きっとこういう時ってさみしいだろうなーと思う。
クリスマス前後に自殺者が増えると一緒で、
自分の孤独感が増してしまう時期だろう。
 
夕方になると、買い物に行きがてら娘と一緒に
ここに寄って遊ぶのが、私たちの日課になっている。
夕闇のせまるスワヤンブーの一角で
子供たちのきゃあきゃあと遊ぶ声が響いている。
小さい子を少し大きい子が面倒を見て、
大きい子は夕ご飯の仕度。
 
中学生ぐらいの子は、ガレージの中に座布団を轢いて、
蛍光灯の明かりの元に補習を受けている。
いままで学校に行っていない子がほとんどなので、
地元の学校の授業にもなかなか付いていけない。
12歳で1年生の子もいる。
 
明日から、ダサインでみんな浮かれて、ヤギを買って
肉ばかりのお祭り騒ぎに国中が酔いしれるわけだが、
ひっそりと子供たちだけで過ごしている場所がある事も
思い出して欲しい。
 
お金持ち達の奥さんが毎年ダサインに
(無駄な)サリーを新調する1枚分だけでも
この子達のために使ったら・・・・
自分の子にバイクを買わないでこの子達のために使ったら、
ネパールも少しはマシになるんじゃないかと思う。
 
「ネパールってすべてが間違っている、
と言いたくなるよ、まったく」
とひとりごちる、楽しいダサインに水を注す(したい)ばなな猫であった。
 
そうそう、
家に子供の古着が山ほどあって困る~、という方、
「捨てるにはちょっと~」というような物でも
ください。
私が届けますよ。
 
あ、日本からは送らないでくださいね。よく税関でもめます。
税金がかかることもあります。(なんでやねん!)
この前は、ドイツから送られてきた体操着300着、
クリアするのに3ヶ月もかかったそうです。
最初は4万ルピー払えって言われたらしいです。
 
ほっんと、アホです。
(↑自転車現場監督さん風に読んでください)

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コメント 2

hikaruno

家族・親戚しか愛せないネパール人、とても可愛そうですね。
 自分の身内を愛することは、誰でも出来ること、そんな姿が、孤児院経営を、ビジネスと考えてしまう土壌があるのでしょう。
 日本人、外国人を見れば、援助援助と求めてくる彼ら、自分の国のことは自分で責任をもってやれと言いたくなってしまいます。
 
 カトマンズ近郊に足を運べば、目を疑いたくなるような豪邸の数々、3LDKどころではない。3階建て、4階建ての10LDK以上、どこが貧しいと言えるのだ。そんなことばかり言っていると、今に天罰が下るぞ。
 ネパールが貧しいのではない、ネパール人の心が貧しいのだ。
 そんなことも見抜けないで、へいへいと援助をしている日本人も哀れで、国際性も欠ける。こうした責任も痛みも伴わない援助が、ネパール人の自助自立を損なっていることすら気がつかない。
 援助をする前に、日本の国が、今どうなっているのか考えてほしいものである。 おせっかいをする余裕などないはずである。
by hikaruno (2007-10-18 02:15) 

ばなな猫

ヒカルノさま、コメントありがとうございました。自助努力への支援は解りますが、ただお金を出す、といった援助には、ワタクシも賛同しかねます。助けてもらっていることに対して感謝もできないほどに、ネパールの「援助慣れ」は進んでいるように思われます。残念ですが、これが大多数の意見ですよね。素朴で良かったはずのネパールも、段々とすさんで来ていると感じます。とくにカトマンズ市は、金カネ、金、みたいな空気が鼻につきます。残念です、ほんと。
by ばなな猫 (2007-10-18 04:47) 

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